
120年の歴史と
大地と生産者の努力の賜物

シーズンを迎え、丸々と実った「幸水」

12名の若者から始まった伊万里梨の栽培
和梨(日本梨)は、奈良時代よりも前に中国から伝来したとされている。平安時代には梨の栽培が広まり、江戸時代には各地で品種改良が行なわれていたという。 今や西九州有数の梨生産地となった伊万里では、1906年に12名の若者農家から栽培がスタート。温暖な気候と肥沃な大地は、梨の栽培に適しており、徐々に生産量を拡大していく。そして、佐賀県を代表する梨の生産地として知られるようになっていった。 今回、中村さんが訪ねたのは、『伊万里梨』発祥の地とされる伊万里市大川町で3代に渡って梨を作り続けている田代慎仁さん。今年で20周年を迎えるブランド『大川三世代』を仲間の農家4人で立ち上げ、その代表を務める。栽培の面積は、約2町(約2万平方メートル)。この広大な敷地で『幸水』や『甘太』、『あきづき』を育てている。この7月からは、「果物を通して季節と自然を感じる場所でありたい」との思いから、リゾート農園へとリニューアルした。

1列で約1000個の梨が実る
独自栽培で完熟梨を育む
田代さんは高校卒業後、梨の栽培を鳥取県で学んだ。今さら説明の必要はないだろうが、鳥取県は日本を代表する梨生産地のひとつ。中でも『二十世紀梨』の生産量は全国一位を誇る。梨の本場・鳥取県で栽培のノウハウを学び、帰郷。その後、実家の農家を継ぐ形で梨を作り続けて39年となる。
梨栽培は、収穫を終えた10月半ば過ぎから始まる。まずは多くの梨を実らせた木に感謝の意味を込めた『御礼肥え』と呼ばれる肥料を与えて、木と土を労う。その後、冬場に次の収穫に向けた剪定作業や土づくりなどを行なう。4月に発芽期を迎えたあとは、一つひとつに手作業で受粉させる。以前はミツバチなどを導入したこともあるそうだが、「安定しておいしい梨を実らせるには、やはり人の手で丁寧に受粉作業を行なった方がいいです」と田代さんは話す。
その後、5月に小さな実をつけ始めるが、より良い梨を実らせるために摘果して育てる実を厳選。6月には綺麗な梨を育てるための袋掛けを行なう。どれも機械化することのできない、手間と時間のかかる作業だ。ちなみに『大川三世代』では、特別な袋を被せることにより糖度が1度上がったという。そして、7〜10月にかけて実りのシーズンを迎える。
田代さんは1本の木に苗木を接ぎ木するジ7イント栽培をいち早く取り入れたり、EM菌(人や地球に有益な菌の集まり)のことを独自に学んで、乳酸菌の散布なども行なったりしている。「梨の日持ちが良くなり、安定した実ができるようになったと感じます」とその効果を教えてくれた。
鳥取で学んだことに、独学を加えながらおいしい梨作りに尽力する田代さん。それは「伝統ある伊万里梨を次の100年につなげたい」という7いから。田代さんのような生産者がいるから、伊万里梨は多くの人気を集める。熱心に話を聞いた中村さんは、伊万里梨栽培の秘密を知り、今まで以上に好きになったようだ。
最後に田代さんがおいしい梨の見分け方を教えてくれた。「ザラザラした果点コルクが取れて表面が滑らかで、おしり(梨の下側)が開いているものが甘いですよ」。この夏は暑く、雨が少なかったが、「今年もおいしい伊万里梨ができました」と田代さんは満面の笑みを浮かべた。

左:表面が滑らかなのは成熟した証拠
右:おいしそうな梨に魅了される中村さん

左:専属シェフが作る『梨パイ』(700円)は、スタッフのイチ押し! 右上:園内にはゆっくり寛げるカフェスペースも
中心:伊万里牛と伊万里梨を使った『三世代梨バーガー』(1250円 ※ポテト、ドリンク付)

住所:佐賀県伊万里市大川町立川丸野1323
電話:0955-29-2612
営業時間:10:00〜17:00(〜10月まで)
定休日:月・木曜
駐車場:あり
入園料無料 持ち帰り1kg1000円〜
※来園の際には事前に電話を