祖父がはじめ、父が名人に
修造さんが受け継ぎ未来へ
前田修造さんが代表取締役社長を務める『伊万里グリーンファーム』は、修造さんの祖父・武義さんが1963年に木製ハウス内で2アールに作付けしたネギから始まった。以来、60年以上にわたり、ネギを作り続けている。その間、順調に規模を拡大させて1991年に『伊万里グリーンファーム』を設立。1991年、父・清浩さんが代表取締役となり、1995年に伊万里市の認定農業者で初めて法人認定を受ける。そして、1997年に「さが農業逸品づくり名人(こねぎ部門)」を受賞。1998年には、土耕ネギ初となるハウスモニタリングシステムを開始するなど最新技術も積極的に導入している。2006年からはカットネギ事業を開始し、2009年に加工品『伊万里香ねぎ塩』を発売。その後もオリジナル商品を開発し続けている。
2022年5月、修造さんが代表取締役社長に就任。より質の高い『伊万里香ねぎ』をはじめ多くの商品に磨きをかけ、次世代につなごうとしている。
青々と育った「伊万里香ねぎ」。手作業で丁寧に収穫を行なう。
収穫したネギはトラックで加工場へ。
加工場ではまずエアブローで土やホコリなどを落として選別場へ。熟練のスタッフが目視で細かくチェックしながら、余分な葉などを取り除いていく。
綺麗になったネギを機械でカットし、手作業で計量してパック詰めされる。
店頭に並ぶのを待つ『前田さんの伊万里ねぎ(伊万里香ねぎ)』。
中村さんもクリーンルームを通って加工場内へ
アプリで育成状況を管理
『伊万里グリーンファーム』が栽培しているのは、葉ネギを若いうちに収穫する小ネギ。点在する農地2・6ヘクタールには、70棟のビニールハウスが建ち、季節や出荷量などに合わせて、安定した出荷ができるよう計画的な栽培を行う。
ネギは種まきから収穫までに80〜100日間を要する。種まき前には『伊万里グリーンファーム』が大切にしている土づくりを行なう。抗生物質を含まないエサを与えている近隣の鶏舎から鶏糞を取り寄せ、それを畑に混ぜ、適した土壌にする。栽培中の農薬も最小限にとどめ「極めて特別栽培に近いです」と修造さんは話す。水の管理も重要な要素。収穫前には与える水の量を控えて、旨味・甘味を高める。こうした栽培管理に活用しているのが、農業支援アプリ『アグリノート』。いつ・どれくらいの量の水を与えたかなどを記録できるこのアプリを使って、スタッフと情報を共有しネギ作りに生かしている。傷つきやすいネギの収穫は人の手によって丁寧に行われる。取材した日は暑さを避けるため、早朝6時から収穫がスタート。多い日は500キログラム以上も収穫しているという。
収穫されたネギは2017年に完成した工場へ送られる。この工場は国際的な衛生基準である「HACCP」に対応。ここで熟練のスタッフが手作業で『伊万里香ねぎ』として出荷するものと、ドレッシングなどの加工品用とに選別。厳しい衛生基準をクリアすると同時に、安全・安心な高品質の商品が生産されている。
ネギなどの農作物は、規格外品が出る。それらは見た目や形が悪いだけで廃棄されていた。しかし、丹精込めて育てたネギが廃棄されるのはもったいない。そんな思いから『伊万里グリーンファーム』は、生産から加工、流通・販売までを担う6次産業化にシフト。フードロス削減にも貢献している。
名人の父からそのノウハウを受け継いだ修造さんは「ネギが料理の主役になることは少ないですが、食卓に欠かせない食材です。『伊万里香ねぎ』は、豊かな香りにこだわって栽培しています。
有限会社 伊万里グリーンファーム
住所:佐賀県伊万里市二里町大里乙562
電話:0955-23-5780
インスタグラム:@imari_greenfarm